第3章 Lonely warrior
[唇歯輔車]1
乱菊が去り、十番隊の執務室には小さな男女の影があった
男の方は椅子に座ると机に山積みになっている書類をパラパラめくり、最終チェックをしている
女の方はそれを静かに見ていた
「それで何だ。話ってのは」
一通り目を通し、書類の確認ができた冬獅郎はすぐ側に立っている奈々美に視線だけを送った
彼女は冬獅郎の書類さばきに驚いていた
「…えっ?あ、そうですよね!あの雛森副隊長の事で…」
『雛森』という単語が出てきた瞬間冬獅郎は奈々美を軽く睨む
「…雛森の所に行くなって事を言いてぇのなら帰れ。俺はお前らが何と言おうと四番隊に行くからな」
彼の熱い眼差しを受けて奈々美は心が痛んだ
それと同時に彼の言った言葉は彼女の胸に深く突き刺さった
「違うんです。そういう事を言いたいんじゃなくて…。これは私の提案なんてけど、雛森副隊長の所へはこれから二人で行きません?」
「一緒にって事か?どうしてだ」
「今まで私たちバラバラで行ってたじゃないですか。だから病室で三人一緒になる事もなかったし。
私恋次に言われたんです。日番谷隊長と毎日交代でも良いから私たち幼馴染みなんだし、一緒にお見舞いに行ったら良いんじゃないかって」
(『恋次』か…)
奈々美の口からその名前が出てきた事に肩を落とす冬獅郎
「…それに、あんなに自分を押し殺してる隊長は見たくありませんから」
「…え?」