第3章 Lonely warrior
[実事求是]1
*冬獅郎side*
「楠木…お前その腕どうした?」
視界に入って来たのは楠木の死覇装の袖から覗かせる包帯
忘れていた様に楠木は死覇装をまくると綺麗に巻かれたソレを俺に見せてきた
「あ、これですか?これは先程六番隊へお邪魔した時の帰りに転んじゃって…」
六番隊…?じゃあさっき夢の中の会話は実際に話していた事だったのか
…だったらあの『キス』も…
いやいや待て!そんな事よりも六番隊なんて転ぶ様な所あったか?
「もー隊長聞いて呆れちゃいますよね?しかも聞いたらこの子、何も無い所で転んだらしくて、腕が結構エグい事になってるんですから」
その松本の話を聞いて俺の眉間は更に皺を寄せる
「楠木、本当にそれ自分で作った傷なんだな?」
「えっ?はいそうですけど…」
「どうしたんですか?隊長」
コイツ嘘ついてるな
そう判断したのは特にコレって言うわけではないが、見れば一目瞭然で分かる
かなり昔からずっと一緒にいたんだ
俺の楠木に関しての洞察力ナメんなよ
「…そうか。気を付けろよ、お前は唯でさえドジなんだから」
取り敢えずお前がそういうのなら俺は何も言わねぇよ
俺が楠木に言葉を掛けたら、声こそ出てないが松本は何故かかなりニヤニヤしてこちらを見ていた
…何なんだよさっきから一体…
ふと窓を見てみるとそこには夕焼け空が広がっいた
俺の血の気はどんどん引いていく
「まっ松本…。俺は一体どれぐらい寝てたんだ…?」
「う~んとそうですねぇ。三時間かな?」
「何?!三時間だと?!」
もう俺の頭はパニック状態
何故かと言うと、松本が隠し持っていたやら手が回らなかったやらで、近日中締切の未処理の書類が溜まっていたからだ
雛森の所に行ってもそこで仕事する訳にはいかねぇし、かと言って部下たちはきっと自分の事で精一杯だ
だから仕方がねぇからその分の書類は自分の睡眠時間などを削ってでもやるようにはしてた
俺は慌てて自分の机へ向かう
そこには積もりに積もった書類の山
最早悪い気しかしない
松本と楠木は呆然とした顔で俺を見てる
この慌て様に意外性でも感じてんのか?