第3章 Lonely warrior
[下意上達]2
「奈々美、アンタ恋次に襲われなかった?」
「おそわれる?…違うんですよこの傷は!本当に自分で転んだもので…。決して恋次にやられたワケじゃ…」
言いながら奈々美は自身の傷付いた左腕を指して答えた
その刹那、遠い目をしてこちらを見ている乱菊
「はー、違うわよ。本当アンタってそうゆうとこ疎いわよね。
私が聞いてんのわねぇ、恋次に痴漢されたのかって事よ!どうなの?!」
自分の机をバンバン叩き問い詰めた乱菊に、その圧倒的な攻撃にたじろぐ奈々美
すると、奈々美が言いにくそうな口調で口を開いた
「とっ特に何されたってワケじゃないんですけど、迫られたって言うか顔が物凄く近くなったと言いますか…」
「……」
一瞬乱菊の思考がストップするが、すぐにまた動き出す
「それってキスされそうになったって事ぉぉぉ??!!」
「…キス…ですか?」
「そうよキ・ス!アンタそれを知らないとは言わせないわよ」
「知ってますよそれくらい。近頃現世で流行しているアレですよね」
「…まぁその行為自体今も昔も無いと思うけどね」
乱菊が初めに大声を出した為、ソファの方からモゾモゾとした音がした
自然と目がそちらにいく二人
しかしまたすぐに乱菊は奈々美へと視線を戻した
「そっかぁ。恋次もう奈々美を襲っちゃったのか。奥手そうに見えて案外やり手ね」
「あの、今私が言った事が属に『襲う』に直結するんですかね?」
「そうよ。完全にアンタは恋次にやられたわ。これからは用心なさい?」
ガバァッ
冬獅郎が勢い良くソファから身を乗り出し、翡翠の色をした瞳をこれでもかと言うぐらい開いて、奈々美を見詰めている
奈々美もまた同様に彼を見詰めていた
「あーらお早うございます隊長っ♡」
そう言うと乱菊は冬獅郎にニンマリ笑って見せた
下意上達(カイジョウタツ):下の者の意見や事情が上位の者に届くこと