第3章 Lonely warrior
[雲南万里]2
「じゃあ僕は帰るよ。後は二人でごゆっくり」
そう言うとイヅルは椅子から立ち、奈々美に視線を配ると病室を出て行った
イヅルが去った後、倒れ込む様にして椅子に座ると桃の手を強く握る
「桃ちゃん大丈夫…?あーもっと話したい事があんのに浮かばない!…取り敢えず起きてくれて良かった。私も日番谷隊長も物凄く心配したんたからね?!」
途中から涙ぐんだその声は次第に奈々美の頬から温かい滴を流れ出させた
「…心配してくれてありがとう。私もずっと奈々美ちゃんに会いたかった。あと…」
「あと?」
一つの間を置くと桃自身も今まで我慢していた涙を流した
「…十番隊三席の入隊、おめでとう!」
「桃ちゃあん!!」
抱きしめ合った二人の頬を流れる綺麗な滴は誰にも止める事は出来なかった
「でもどうして知ってるの?そんな事」
二人は落ち着きを取り戻し、奈々美は差し入れで持って来た白桃を切っていた
「あっそうだよね。昨日シロちゃんが教えてくれたの。凄く喜んでたよ」
「隊長が?…喜んでたって本当かなぁ。今朝もなんか冷たかったし。あの人が本当に私を必要としてくれてるのか最近分かんなくなってきちゃった」
「そんな事ないよ。久しぶりに目覚めたと思ったらずっと楠木、楠木って」
その時の彼女の顔は少し歪んでいた
「…ちょっと妬けちゃうな」
「え、何か言った?」
「別に、何でもないよ」
優しい声で言うと、彼女は奈々美の見えない所で布団をシワクチャに握り締めた
雲煙万里(ウンエンバンリ):非常に遠く離れていることの例え