第6章 NOTICE
[一衣帯水」2
━━━そして今現在
厠から帰って来た乱菊の身に危険因子が顔を出す
「あースッキリした。駄目だもう私オッサン化してるわ」
廊下を歩きながらこの様なひとりごとを吐いていると、丁度今通り過ぎた執務室の方から大声が聞こえてきた
「はあっ?!いねぇじゃねぇかよ!ここにいると踏んでたんだがなぁ」
その声の主は奈々美を探しに来た冬獅郎の声だった
(げっ!隊長だ。絶対隊長ったら今まで仕事サボった私の霊圧追い掛けてここまで来たんだ!もし見つかったら絞め殺される)
見当違いも良い所である
執務室から漏れる夥しい程の霊圧は、乱菊にとっては冬獅郎が怒りを露わにしている所為だと解釈された
…本当は焦り故なのだが
乱菊は中にいる冬獅郎にばれぬよう、こっそりと自身の霊圧を閉じた
「ちっ、しょうがねぇな。アイツがここにいねぇんなら探しに行くか」
(どこにいんだよ楠木!)
「!!」
(えっちょ、マジで怒ってんじゃん!探しに行くとか有り得ないわよ!…げっこっち近付いて来てるし…!)
奈々美がここにいないと分かって当たりを探しに行こうと冬獅郎は扉へ向かった
乱菊は慌ててそのまま外に出、草影に隠れる
直ぐに冬獅郎が来て瞬歩で去るのを見送ると、乱菊は安堵の溜め息をついた
「ハ~…。もうこのまま寮に帰ろ…。明日がおっくうだわ」
一衣帯水(イチイタイスイ):川や海を隔てて土地が互いに接近していることのたとえ