第6章 NOTICE
[曖昧模糊]
「…雛森…お前何で…」
あまりの唐突さにされるがままになった冬獅郎は、離れた際にこう言葉を漏らした
「何でって。言ったじゃないさっき。私はシロちゃんの事が好きなの。ずっと前から」
「…でも俺は…」
「シロちゃん言いたい事は分かってるつもりだから。でも今は言わないで」
下に俯く彼女を見て、冬獅郎は何とも言えない気持ちに襲われる
「…分かった。お前の気持ちも考えるよ。だから今日は帰らしてくれねぇか?気持ちの整理をしてぇんだ」
桃が静かに頷くのを確認すると椅子から立ち、扉へと向かった
「ねぇこれからも今まで通りに接してくれないかな?こんな事で気まずくなりたくない」
「当たり前だろ。じゃあな」
頭の中を駆け巡る動揺を隠し、冬獅郎は扉を閉めた
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「あれ?日番谷隊長?」
所変わって十番隊寮
乱菊の部屋の前に奈々美が立っていると、冬獅郎が帰って来た
彼は誰でも分かる遠い目をして奈々美の呼び掛けにも気付かないまま、自分の部屋へと入って行った
「奈々美ー?ちょっと早く野菜持って来てよぉー!」
少し開かれた扉の奥からは乱菊の声が聞こえた
本日の夕食は急遽乱菊の部屋でとる事になったのだ
…勿論彼女の部屋は酒しか存在しない為、料理の材料は必然的に全て奈々美持ちだ
「はぁい今行きまーす」
(日番谷隊長、一体どうしたんだろ?)
奈々美の疑問が空へと消えた
曖昧模糊(アイマイモコ):はっきりしないで、ぼんやりしている様子