第6章 NOTICE
[不協和音]2
「アンタ、まだ何か言い残してる事があるんじゃないの?」
「え?…言い残した事…?」
「そうよ。アンタが一番分かってんじゃないの? 例えば…隊長の事とか」
何も確証のない問いだったが、奈々美は持っていた湯呑みを机に置き、俯いてしまった
(あーら図星…)
「話してよ。そっちの方がアンタもきっと楽になるから」
そう言うと、乱菊は奈々美の近くへと腰を下ろした
すると奈々美の口が微かに動いた
「…私、気付いたんです。自分の気持ちに。日番谷隊長が好きだって」
ゆっくりと言葉を紡ぐ奈々美に乱菊は黙ってそれを聞き入れた
「この十番隊に入隊したのだって、元はと言えば日番谷隊長といれたらなぁって思ったからなんです。
そんな私に日番谷隊長は『ずっと俺の側にいて笑ってくれ』って言ってくれたんです。…その時に、気付いた…」
奈々美は泣いていた
先程とは少し違う涙だったが、好きな人を想う所は同じ様だ
乱菊は奈々美の背中をさする
「…うん。それで?」
「私は、日番谷隊長を好きになった。でも、彼には桃ちゃんがいる。あの子だって私より遥か前から日番谷隊長の事を想ってる。
私の気持ちで、これ以上私たち三人の仲を崩したくない…!」
途中から過呼吸になり、まともに息ができなくなった奈々美の背中を抱き締め、乱菊は背中をさすり続けた
不協和音(フキョウワオン):融合せず不安定な感じを与える和音