第5章 Locations subject to rainbow
[狂悖暴戻]1
「書類、わざわざありがとう。でも全身びしょ濡れじゃないか。 楠木くん、もし良かったら三番隊で少し休んで行ったら?」
「ありがとう吉良くん。でも多分待ってても雨はあまり変わらないと思うから行くね。心配してくれてありがとう」
結局傘をさしてもこの大雨では大して意味をなさなかった
『どうせ濡れてるから一緒』という考えに奈々美は辿り着いたのだ
「楠木くん」
「はい」
出て行こうとした奈々美を呼び止めたイヅル
振り向くと、そこには未だ心配の顔色が伺える彼の姿があった
「風邪、引かないでね」
「うん。ありがとう」
この言葉を最後に部屋の扉は閉まられた
ザァァッ……
奈々美は降りしきる雨の中、十番隊舎へ続く路地を歩いていた
ピリリリリ ピリリリリ
「!、伝令心機の音…?どうしてそんな物が」
普通は死神の現世任務時に技術開発局から配給される伝令神機
それは尸魂界にいる時はあまり使われない代物だった
大雨の中でも大きくこだます着信音
奈々美が周りを見回すと、この場に唯一ひっそりと佇む倉庫から鳴っている事が分かった
何番隊の持ち物なのかすらも分からない倉庫に奈々美は入って行った
「…あった伝令神機。でもどうしてこんな所に…」
奈々美は一番奥にあったそれを見つけると、発信源も見ずに着信音を止めた
この倉庫は廃倉庫と化しており、天井からただならぬ雨漏りと鼻を刺すような刺激臭が辺りを立ち込めていた
奈々美がこの場を出ようと急いで立ち上がり出口の方へ向くと、そこには女二人の姿