第5章 Locations subject to rainbow
[水平思考]2
時刻は昼、時を見計らったかの様に雨は降り出し、空はとても昼とは思えない暗がりを見せていた
「あらあら。とうとう降って来ちゃったわね。奈々美いいのよ? 無理して行かなくても。どうせまだその書類の期限じゃないし」
「いえ、まだこのくらいの雨なら行けますよ。それに早く他隊の人に渡しちゃえばその人たちの後が楽になります」
「うあ~、人間できんねぇアンタ」
十番隊舎をでる玄関に奈々美と乱菊はいた
奈々美は自分の草鞋を履くと傘と書類を持ち、乱菊に笑いかけながら去って行った
すると、乱菊の側に小さな陰が近付く
「楠木の言葉を聞いて何も感じねぇとは言わせねぇぞ松本」
「ひやおぉぉぅ…。もーたいちょー驚かさないでくださいよぉ。
危うくおっぱいがこぼれちゃう所だったじゃないですかー!」
「…うるさい」
その場から立ち去ろうとする冬獅郎に乱菊は不安な面もちで話し掛ける
「…ねぇ隊長?」
「…何だ」
「奈々美…無事にここまで戻って来れますよね」
「…は?お前それどうゆう事だ」
乱菊は冬獅郎から視線を外すと今さっき奈々美が出て行った門を見詰める
だが降り続ける大量の雨はその痕跡すらも洗い流した様に寂しく聳え立っていた
「…何となくですよ。何となくそう思ったんです」
直感とは推理、考察などによるのではなく、感覚によって物事を捉える事である
時にそれは、人が思いも寄らない出来事の引き金を引く事もあるのだ
水平思考(スイヘイシコウ):既成の概念にとらわれることなく、自由な角度から考えをめぐらすこと