第5章 Locations subject to rainbow
[破邪顕正]1
また暫くして、十番隊の執務室の扉が叩かれた
コンコン
「入れ」
「失礼します。只今戻りました」
そこにいたのは乱菊だった
普段とは異なって非常に丁寧な言葉遣いだが、本人はとても清々しい空気を放っている
「おう。頭は冷えたか?」
先程の一件から気まずい二人の関係
冬獅郎は相変わらず書類に目を向けたまま対応した
「はいお陰様で。隊長、少しお時間よろしいですか?」
その言葉に驚くと机から目を離し、冬獅郎は乱菊を見据える
そこで初めて彼女が自分とは対照的に笑顔である事が分かった
「…あー。じゃあ私、お茶淹れて来ますね」
気を利かし、その場を離れようとする奈々美に乱菊はこっそりとアイコンタクトをした
『ありがとう。迷惑掛けちゃってごめんね』
まるでそう言ってる様な顔ぶり
奈々美はそれに笑顔で返すと、ゆっくりとした足取りで給仕室へと向かった
「…日番谷隊長」
「なんだ」
「先程は申し訳ありませんでした。私の無礼をお許しください。
…ですけど私自身はあの言葉は別に間違ってはいないと思います。隊長のご意見をお聞かせください」
何て自分の部下は信念が通っているのだろう
冬獅郎は意表を突かれた
「俺の意見なんてなものはねぇ。松本、お前の言う通りだよ。
もうこの件でお前は俺に謝らなくていい。俺が悪かった」