第5章 Locations subject to rainbow
[容貌魁偉]1
*冬獅郎side*
今から少し前、楠木が二番隊へ行った直ぐ後だ
松本が俺にこう言ったのは…
「隊長だって知ってるでしょ?あの子がどこかの隊の子たちに嫌がらせされてるって。格下相手に未だに手を出していない奈々美の気持ちも!
あの子は必死に隠そうとしてるけど分かって貰いたいに決まってるでしょ?私でもなくあなたに」
コイツがこんなに泣きじゃくってるのを見たのは初めてかも知れない
市丸の時だって俺や隊員の前では決して弱音を吐かなかった松本
そんなに俺はコイツを苦しめていたのか
楠木が嫌がらせを受けているのは、アイツが腕を怪我した時から何となく予想はついていた
でも俺はどこかで本人が口を割らない限りはその話に触れちゃいけないって勝手に思い込んでた
その結果、アイツは誰にも相談できない苦しみの渦に飲み込まれてしまったんだ
小さい頃から当たり前のように一緒にいて、俺は楠木の一番の理解者だって当たり前のように思っていた
でも現実は全然違くて、それどころかほんの何ヶ月しか共に過ごしていない松本の方がアイツをよく理解している様だった
━━━自分が今物凄く情けねぇ
俺がこう思っていると、感情的になってしまったのか、松本はまた更に追い討ちをかけてきた
「日番谷隊長、あなたは大好きな人に急に拒否される奈々美の気持ちを考えた事はありますか?それでもあの子はいつもひたむきに頑張ってる。言っちゃいますけどね、隊長は雛森に利用されてるんですよ。
隊長だって『奈々美の代わりに自分が四番隊に行かなくてはいけない』って思ってるんでしょ?!あなたの中にはそう言った責任感しかないんですよ!!」
バキッ
持っていた筆を折ってしまった
何故かこの時は俺自身をを責めたり楠木の気持ちを考えたりとかじゃなく、雛森を侮辱された事が許せなかった
『今の雛森には俺が必要なんだ』
こう思った時点で雛森に同情の目を向けてるって事が明確なのにな