第12章 初めて知る恐怖
全てが想像を超えていた。
実物の巨人は恐ろしく、そしておぞましい。不快としか言いようが無い感情が心の中で蠢いている。
アレが人を食う、巨人。
殺戮の限りを尽くしている、人類の敵。
私は意を決してペンを突き立てた。
ガリガリと紙を削るように眼前の光景を描いていく。
『う……っ‼︎』
しかし、限界はいとも簡単にやって来た。巨人の肉体切除実験が始まったからだ。
目を輝かせる分隊長とは対象的に、吐き気を催した私は口元を抑えて目を背ける。
建物の中に居ても分かってしまう凄まじい臭気。
切除された断面から発せられる蒸気に乗って、室内に侵入して来たのだ。
「……何度見ても、慣れねぇな」
「そうですね」
護衛兵達はなんとも複雑な面持ちで実験を見つめていた。
ハッと我に返った私は自分の使命を思い出す。私は描かなければいけない。あの肉の断面を、細部まで…!
『……よし』
自らに喝を入れて前を向いた私は、無我夢中でペンを走らせるのだった。