第12章 初めて知る恐怖
私はバインダーをこれでもかと握り締めて呼吸を整える。
書物や立体模写を嫌という程見た。
大丈夫だ、覚悟は出来ている。
何度もそう言い聞かせるのに、身体は中々云う事を聞かない。先程から震えが止まらないのだ。
「おい、実験開始だ」
「了解。暗幕を開けますが…宜しいですか?」
自由の翼を背負った兵士二人が私を挟んで立っている。
兵長が遣わした護衛兵の一人は丁寧に私の了承を求めてくれた。
『…はい、お願いします』
恐怖を捨て去れないまま首を縦に振る。
次の瞬間。
暗幕の影から姿を現した巨人に、私は。
『………っ‼︎……⁉︎』
思わず息が止まった。
無意識にペンを落とした。
瞬きすら出来ない、体が動かない。
まるで金縛りにあったみたいだ。
兵長がこの場にいたら間違いなくチョップを喰らっていただろう。其れ程に、私はパニックを起こしていた。
「大丈夫か……?」
「さん、しっかりして下さい。気を確かに持って…さあ描くんです」
護衛の兵士に肩を叩かれて、やっと意識がはっきりした私。慌てて謝罪すると落としたペンを握り直す。
私の心臓は、壊れる寸前の勢いで暴れまくっていた。