第11章 夕暮れの強制デート
『う……っそだろ…⁉︎』
思わず下品な言葉が漏れる。
私は今、兵長を背負って暗い林道を歩いていた。
『兵、ちょ……重っ‼︎』
重いなんてもんじゃない、あり得ない。
その細い身体の何処にこんな重みがくっ付いてると云うんだ。
私の頭はパンク寸前だった。
ちなみに、脚の筋肉も破裂寸前だ。
「無駄口叩くな…歩け」
兵長は身体から全ての力を抜いて私の背に覆い被さっている。
肩越しに喋られると吐息が耳に!
胸キュン!
などと言っている余裕は微塵もない。
今にも身体が押し潰されそうだ。
『も……無理、です』
「まだまだ」
『死ん…じゃいますっ…て』
「故郷では仮にも悪漢を取り締まる側に居たんだろ。貴様の実力はそんなモノか?」
キビキビ歩け。
これはお前に課せられた特別訓練だ。
兵長は普段通りの声音でそう告げた。
『(騙された……!)』
考えてみれば、それもその筈。
小一時間散歩した位で兵長が疲れる訳がない。
前々から鍛えろとは言われていたが…まんまと一杯食わされた。
私はいつか然るべき報いと云う名の悪戯をしてやろうと知恵を絞る。
楽しい事でも考えてないと心が折れそうだからだ。