第11章 夕暮れの強制デート
その後、私は崩れ落ちるまで兵長を背負わされ続けた。
とうに限界を突破している循環器。
まさに息も絶え絶えにしゃがみ込んでいると兵長のお叱りが降って来る。
「チッ……軟弱者め」
貴様それでも兵士か。
鬼上司はそう付け足したが、厳密に言えば私は兵士じゃない。
しかし兵団に属した地点で彼の中では一部下、一兵士なのだろう。
この人に日々シゴかれている新兵達はなんて強靭なメンタルを持っているんだ。もはや尊敬に値する。
そんな事を悶々と考えていれば、今度は兵長に手を引っ張られた。
「おい……いつまで座っているつもりだ。帰るぞ」
もちろん有無を言わさず歩き出す兵長。
所謂友達繋ぎで結ばれた掌から伝わる体温、萌えキュン!などとは毛程も思わない。
私は未だ上がりっ放しの息を整えようと大きく深呼吸をする。
吸い込んだ夜の風は、ほんの少し汗の味がした。
「(遥かなる異国ニホン……掃除の神でもいるのか?実に興味深い…こいつからはまだまだ情報を引き出さねば)」
『(くっそ……兵長め。いつか必ずその刈り上げ触ってやる、うなじから両サイドに掛けてジョリッてやってやる…!)』
こうして、実験前夜は更けていったのであった。
第11章[夕暮れの強制デート]完