第11章 夕暮れの強制デート
その言葉に空を仰いでみると確かに星が瞬き始めていた。
遥か彼方に光る星は何を思い、私達を見下ろしているのだろうか。
今のは我ながらに詩的だったな、などと考えながら兵長に声を掛ける。
『そろそろ帰りましょうか。きっとエレンがお風呂を準備して待っ……兵長、何をなさってるんですか』
天から視線を下ろすと林道の端にしゃがみ込んでいる兵長が居た。
何をしてるのかと問えば、これまたとんでもない答えが返って来る。
「……疲れた」
『は?』
「突然脚に限界が来た…おいお前、よ。俺を背負え」
『は……⁉︎』
「聞こえなかったのか。俺を、おぶれと言っている」
一体どうしたと云うのだろうか。
暗い夜の帳が下りた森の中、兵長がご乱心だ。私は呆然と駄々をこねる刈り上げ……否、艶のある漆黒の頭頂部を見下ろす。