第11章 夕暮れの強制デート
「……なんだと?」
お前の故郷について教えろ。
散歩中、唐突に下された兵長からの命令に困った私。
散々考えあぐねた末、私が選んだ話題はやはり掃除道具に関する物だった。
「てめぇ…嘘を言っているなら直ぐに訂正しろ。今ならまだ間に合うぞ」
『全部本当です』
「じゃあ何か……お前の故郷には半永久的に吸引力が変わらねぇ自動塵吸い機があると?」
『ええ、そうです』
「人間の言葉を有し一人でに掃除をする回転式塵吸い機もか?」
『ル○バです』
淡々と答える私をマジマジと兵長が見つめている。本当に掃除の話が好きなんだなこの人。
こんなに楽しそうな兵長は見た事がない。ほぼ無表情だけど。
私は顔の筋肉が勝手に緩むのを感じながら、しばらく掃除談義を続けていた。
辺りが暗くなり始めた頃、兵長はふと空を見上げると「星が出て来たな」と声を漏らす。