第9章 「来ちゃった」【R18】
手の甲についたキスマークを見つめてジャンが笑う。その横顔はなんだかとても幸せそうで。
「センセー…嫌がらないの?」
子犬が母犬に甘えるような、視線。
恋人に恋情を伝えるような、熱視線。
そのどちらともつかぬ眼差しに私の心臓は忙しく脈打っている。
「…どうしよう。俺、先生としたい」
ジャンは言いながら私の胸に顔を埋めた。
きっと、聞こえてしまっている。
早鐘の如く高鳴っている胸の内が。
『じ、自分の身体は…大事にしないと駄目、だよ』
吹き飛びそうな理性を必死で抑えて大人らしい事を言ってみた。
しかし即座にジャンの声で遮られてしまう。
「そんなんじゃない」
『……ジャン…』
「先生とは、身売りとか…そんなんじゃない」
『……っ』
あまりに真っ直ぐなブラウンの瞳に見つめられて、私は理性と常識を捨てた。