第9章 「来ちゃった」【R18】
まさか自分がここまで弱い人間だとは思わなかった。ジャンはそう言って自嘲気味に笑う。
「訓練も身に入らねぇし、何もかも上手く行かなくって…何時しか無茶をするようになった」
『……身売り?』
控えめに問うた私の頭には暗闇の森での情事と、女子トイレでの一件が浮かんでいた。
「そう。金は貰ったり貰わなかったりだな…その日の気分で」
そんな行為の中でだけでも“誰かに愛されている”という充足感が欲しかったのだと言う。
「愛…っていうか、まあストレス発散にも近かったけど」
ジャンは話し終えるとソファに頭をもたげて息をついた。
おもむろに立ち上がった私はそんな彼の隣に腰を掛ける。
「かっこ悪いだろ…俺」
『……そんな事ないよ』
「“むしゃくしゃしてヤッた”ってか…はは、自分でも馬鹿みてぇ」
掠れた声でそう言ったジャンは、私の手を取って自分の頬に当てがった。