第8章 実験
「お前…なめてんのか。誰を庇ってるのかは知らんが明らかに得策ではねぇぞ」
兵長は凄い剣幕で怒ったが、それでも私は答えなかった。
黙って俯いていると突然兵長に手を掴まれる。その体温は思った以上に温かい。
『……兵長?』
「心配してるんだ…これでも、一応な」
『え…っ』
「お前にもしもの事があったら俺は耐えられない」
重なり合った掌から伝わる優しい熱。
兵長の手は見た目に似合わずとても大きくて、私のそれをすっぽりと包み込んでしまった。
『ど、どうしたんですか急に…そんな』
私はまるで少女のように頬を火照らせて瞬きをする。こんなにドキドキするのは何年振りだろうか。
「全て本心だ…お前の掃除に関する活気的な知識を失う事は俺にとって大損害だからな」
『………』