第8章 実験
痛む後頭部を押さえながら起き上がると、どうやら此処は医務室のようだった。
消毒液だろうか。
棚の中に医薬品らしき瓶が並んでいる。
『兵長、私は…』
「エレンの巨人化に巻き込まれて頭を強打したんだ…これしきの事で気を失いやがって」
『…すいません』
「チッ…別に謝罪しろとは言ってねぇ」
再び溜息をつく兵長。
サラサラの黒髪を垂らして項垂れている。
部屋を支配する重い沈黙。
どうも兵長とは間が合わない。
「時に聞くが…よ」
壁にもたれかかっていた筈の兵長は言いながら私の枕元に腰掛けた。
ベッドのスプリングがギシッと音を立てる。
『……?』
急ぎ足になる鼓動を悟られぬように首を傾げれば、兵長はそんな私を見透かすかの様に鼻で笑った。