第8章 実験
「だがな…後悔はない」
真っ暗な闇の中、兵長の声が聞こえて目を覚ますとそこには見知らぬ天井があった。
直後、鋭い三白眼が私を覗き込むようにして視界に入って来る。
「やっと気付いたか…おいエレン、何か温かい物を用意して来い。紅茶とかな」
「はい…!」
エレンは転がるようにして部屋を出て行った。
その表情は未だ晴れていなかったように見える。
「…これが何だか分かるか?」
意識確認のつもりなのだろうか。
兵長は私の鼻先で一本指を立てている。
『…人類最強のお母さん指』
「チッ…また訳の分からんニホン語を」
だが戯言が言えれば充分だな。
兵長はそう呟いて小さく息をついた。