第6章 同情と愛情【R18】
『お疲れさま。訓練頑張ってね』
それだけ口にした私は笑顔を絶やさぬよう歩を進める。
未だ目を逸らしたままのジャンとすれ違おうとした、丁度その時。
「待てよ」
パシッ…
肌を打つ音が耳に響いて、私はジャンに腕を取られたのだと気付いた。
しまった。
判断を誤ったか。
脳内をそんな言葉が駆け巡っている。
『なに?』
私より少し高い目線。
それを見上げるようにして問うと、ジャンは憎々しげに視線を下ろした。
「アンタさ…分かってて黙ってるんだろ」
どんよりと濁った瞳。
よく見ると少し瞼が腫れている。
『取り敢えずその手を離しなさい。女の子の腕を乱暴に掴むもんじゃな』
「…ウザいんだよ」
その言葉を吐き捨てるのと同時に、ジャンは私をトイレに引き摺り込んだ。