第6章 同情と愛情【R18】
そんな兵長との会話を思い出しながら講義室を出ると、何人かの女子兵とすれ違う。
彼女らは一様に頬が上気し、妙に息が上がっていた。
「あ、先生だ!」
「お疲れ様でーす」
私に気付いて軽く頭を下げる新兵達。
僅かにその瞳が揺らいでいる。
まだ新米ではあったが刑事の勘だ、間違いない。
『(あの子達、何か隠し事を…?)』
酒か。
クスリか。
或いは…いや、これから通常訓練だというのに其れは無いか。さすがに勘繰り過ぎだ。
私は自身の過剰な推論に首を振った。
ガチャッ
「げ、…教官」
しかし私の予想は的中することになる。一番最悪の形で、だ。
兵長の待つ階下へと続く階段に差し掛かる手前。
女性用と記されたトイレから姿を現したのはジャン・キルシュタインだった。