第2章 調査兵団宿舎にて【R18】
『……っ…!…‼︎』
私は身の丈を軽く越える木の樹上に居た。
息を押し殺して身を隠す。
すると私を喰らおうとしていた野犬は諦めて去って行った。
『(…助かった)』
自分の命があることに一先ず安心する。
しかし興奮が落ち着いてくると今度は痛みが襲ってきた。
野犬に食いちぎられた左腕。
繋がってこそいるが皮がめくれて肉が露出している。これは偉くまずい状況だ。
放って置いたら、それこそ命を落とす。
『(すぐに治療しなきゃ…)』
でも、どうやって?
言いようのない不安が胸を占拠する。
ここが何処だかも分からない。
とてもじゃないが人間が住めるような場所じゃないし、ここに至るまで勿論一人もヒトを見ていない。
まさに絶体絶命だ。
私は冷たい木の幹に背をもたれかけて頭を抱えた。
考えを整理する時間が欲しい。
けれど、そんな余裕も体力も残されていない。
『(どうしよう…私は、どうしたらいい…?)』
ガサッ
『!?』
その時だった。
突然、葉の擦れる音と共にヒトの声が聞こえてきたのだ。