第2章 調査兵団宿舎にて【R18】
『はっ…はあ、は…っ』
私は走っていた。
暗い森の中を、ただ闇雲に。
『(ここは一体何処…⁉︎)』
最後に残っている記憶はかねてより追っていた犯人の顔。
あと一歩で逮捕に至れるという所で、私の意識は途絶えた。
奴の隠し持っていたナイフが心臓を貫いたからだ。
『は、あ…っ夢なら…覚めてよ…!』
再び意識を取り戻した時、私は見知らぬ森にいた。
犯人に拉致されたのか?
いやそれは無い、間違いなく抉られた筈の心臓が元気良く鼓動を鳴らしているのだ。ここが現実でない事は明らかだろう。
夢か、それとも天国?
それも違う。
だって…夢ならこんなに痛いはずがない。
「グルルァガァァッ‼︎」
全速力で森を駆け抜ける私を一匹の野犬が追う。
もし仮にここが天国なら野犬に噛み付かれて肉が削がれる事故なんて起きないだろう。
しかし、と私は考える。
では現実なのかと問われても肯定出来ない。
感覚は限りなく現実に近いが…ただ、はっきりしていることは自分の命が再び危機に晒されているという事実だけ。
『…何で…っこんな事に…‼︎』