第5章 兵士とは言え皆年頃の男子
『いや、あの…あはは』
彼氏がいるのかと聞かれれば答えはノーだった。
元居た世界で憧れていた先輩刑事ならいたが、死んでしまった今となっては…いや考えるのは止そう。
私は零れそうになる涙をグッと堪えて前を向いた。
しかし、思春期真っ盛りの新兵達がそれを見逃すはずもなく。
「先生…今、好きな奴のこと考えてただろ?」
にやけ顔のコニー。
否定しようと焦ったのが命取りだった。すかさずライナーに隙を突かれてしまう。
「図星だな」
『違っ…わ、私は…!』
一斉に向けられる好奇の目に顔を赤くしていると今度はエレンが口を挟んだ。
「ジャン、お前も何か言えよ。さんのこと綺麗だって褒めてただろ」
「馬鹿…!余計な事口走んなよお前!」
聞き覚えのある声に眼を動かす。
すると窓際に座っていたジャンと視線がぶつかった。
何を言えばいいのか分からずヘラリと笑いかけたが、無視。舌打ちすらされた気がする。
クソ、ジャンめ。
なんて難しいお年頃なんだ。
『…はあ』
中々進まぬ自己紹介に私はげんなりと肩を落とすのだった。