第25章 それでもその日はやって来る
しかし、私はここである事に気付く。
エレンが居ない。
どこを見渡しても。
姿が見えないのだ。
『……っ‼︎』
壁外調査初の無傷での帰還。
祝杯ムードで通りが盛り上がる中、私は門の方へと駆けて行く。
何処?
どこに居るの、エレン……‼︎
その時だった。
暗い路地裏から飛び出す兵士の姿が見えたのだ。
私の見間違いでなければ、それは104期生の数名で。
彼らは何故かフードを目深に被り、来た道を引き返してしまった。
壁外へと出て行ってしまったのだ。
『……何処に行くの…っ⁉︎』
緊迫した私の声が響く。
だがそんな叫びも虚しく、彼らが再び振り向いてくれることは無かった。