第25章 それでもその日はやって来る
独り残った壁内で神に祈る。
もし、神様が存在するのであれば。
どうか。
どうか。
彼等が無事でありますように。
『……』
堪えきれぬ涙で視界が滲む。
行かないで。
死なないで。
何度も口から零れかけて、飲み込んだ台詞が脳内を駆け巡っている。
言いようのない不安と、目を背け続けていた現実が今……私の身体を押し潰そうとしていた。
『……っ…』
頬を濡らす涙を拭う右手。
まだ兵長の熱が残っている。
もし、もう一度会えたなら。
必ずあの刈り上げを触ってやろうと……そう、心に決めて帰路に着いた。