第16章 飴と鞭
『なっ…何を仰って』
「お前らを見ていれば分かる」
俺を誰だと思ってるんだ。
兵長はそう言って私を見据えた。
今や私の心臓は早鐘のように脈打っている。自然と息が上がってしまう程だ。
「素直に話せ。罰しはしない」
まるで心の中を見透かされているようだった。
流石は兵士をまとめ上げる上官。下手に隠し立てをしても無駄なことだろう。
私は意を決して口を開いた。
『……はい』
「それは質問に対する答えと捉えて相違ないな」
低いがしかし優しい声音で話す兵長に、コクリと頷いて返事をする。
「分かった」
兵長は一言そう呟いて、再び書類に目を落とした。