第16章 飴と鞭
「おい……お前ら」
私達を呼ぶ声が聞こえて天を仰ぐと、自室の窓辺から此方を見下ろす兵長がいた。
『何かご用でしょうか兵長』
地面に横たわった状態のまま顔だけを動かして兵長を見やる。
咄嗟に立ち上がって敬礼するエレンを見て、私も一応左胸に拳を当てた。
庭に寝転んだまま。
「……貴様」
『嘘ですごめんなさい』
フルーツナイフを手に取った兵長が投擲体制に入るのを見て、慌てて立ち上がる私。
すると小さな舌打ちと共にこんな声が降って来る。
「一度中に入って休め……貴重な兵士に死なれたら困るからな」