第2章 調査兵団宿舎にて【R18】
幸い、紙とペンを使って物を書くという文化は同じ次元にあったようで。一先ずその事に安心しながら私は筆を走らせる。
「…悪くない」
書き上がった一枚の絵を見て兵長は呟いた。
描いたのは生まれ育った故郷の風景だ。
日本を代表する山に、聳え立つ城郭…それから時代は違うが和服姿の人間も描き入れておいた。
その絵を見て兵長が何を思ったのかは分からない。ほぼ無表情だし。
ただ、先程までの殺気は消えているように思えた。
「お前…と言ったか、何故このように正確な描写が出来る」
相変わらず威圧感たっぷりに問われて少し姿勢を正す。
そして、言っている事がなるべく伝わるようにと言葉を探した。
『絵を描くのも職務のひとつでしたので…』
「ほう…?」
『モンタージュ、と言います。犯罪者の顔を目撃者の言葉を頼りに絵に起こす作業…です』
私の言葉をひとつひとつ頭で噛み砕いている様子の兵長。
しばらく考え深げに目を伏せていたが、口を開くとこんなことを言った。