第13章 ビビるジャン
題名「怪音」
語り:ライナー・ブラウン
故郷の友人が体験した話をしよう。
仮にこいつを友人Aとする。
ある暑い夏の夜の事だ。
Aは茹だるような蒸し暑さのせいで中々寝付けずにいた。喉が渇いた…水が欲しい…這うようにベッドから抜け出たAは井戸水を汲もうと庭へ向かった。
室内の異常な暑さとはうって変わって、外は心地良い風が吹いている。しばらく夜風に当たっていると、汗が冷えたのか肌寒さを感じるようになった。
そろそろ戻るか。
体が冷えたことに満足したAは井戸へ行く事も忘れて家内へ戻ろうとする。
しかし、その時だった。
ズッ…ズ…ッ
何かを引き摺るような音が聞こえた。
Aは咄嗟に振り返る。
だが庭には誰もいない、自分だけだ。
気の所為か……Aはそう呟いて部屋に戻った。
ベッドに戻ると直ぐに異変に気付く。布団が冷たい、まるで真冬の冷気に晒されたように。
明らかに異常な冷たさにAは困惑する。さっきまであんなに暑かったじゃないか。一体、どうして……?そう…首を傾げた時だった。
ズ…ッズズ…ズ
まただ。
また聞こえた。
しかも今度は部屋の中でだ。
何かが地を這っている。
少しずつ、確実に、近付いてくる……!
Aは慌てて布団に潜り込んだ。
頼む、こっちに来ないでくれ!俺は何もしてない、何も悪くない、嫌だ、誰か助けて……っ!!!
……
…………あれ?
身を固くしていたAはいつの間にか怪音が止んでいることに気付く。良かった、助かった。心無しか布団にも温度が戻っている気がする。
Aはこれで落ち着いて眠れる…と溜息がちに布団から顔を出した。
「ズッ…ズ、ズズズ…ズズ」
「ぎゃああああああっ!!!!」
Aの聞いた怪音の正体はソレの笑い声だったのだ。