第13章 ビビるジャン
「エレン!てめぇ…それはただの悪口だろうが!」
「でも全部本当の事だろ。大体何なんだよ、そのダサい刈り上げ!やるならもっとこう……兵長みたいにスタイリッシュにやれよ!刈り上げ舐めてんのか⁉︎」
「お前が一番舐めてるわボケが‼︎ 」
奇跡だった。
ジャンとエレンが激しく衝突してくれたおかげで「ジャン、駄目よ…駄目駄目」発言がうやむやになったのだ。
まさに九死に一生。
マジで逮捕されるところだった。
コニーは今だに怪訝そうな顔で私を見ているが、平然を装おう。全力で。
やっと気怠さの抜けた頭でそんなことを考えていると、優しげなベルトルトの声が聞こえてきた。
「まあまあ…二人共、落ち着いて。やっと全員揃ったんだし楽しくやろうよ」
それが鶴の一声となって場は収まり、軽い咳払いの後ライナーが声を上げる。
「……よし、じゃあ始めるか」
ゴクリ
誰かが生唾を飲み込んだ音が聞こえた。
シンと静まり返る談話室。
立ち上がっていた新兵達が次々に腰を降ろしていく。
全員が腰を落ち着けたのを確認して、ライナーは言葉を紡ぎ始めた。