第13章 ビビるジャン
ふと、人の気配を感じて目を覚ます。
ぼやけた視界の中には一人の兵士が映っていた。
『……ジャン?』
寝惚け眼を擦りつつ名を呼べば返って来たのは聞き覚えのある声で。
「おはよう、先生」
ジャンは部屋着姿で向かいのソファに座っていた。
ほのかに香る石鹸の匂い。
それから、首元にタオルが掛かっている。シャワー帰りなのだろうか。
『んー……よく寝た』
伸びをしつつ言うとジャンが歩み寄って来た。辺りを見回したが他の兵士はまだ戻っていないようだ。
「他の奴等ならまだ訓練だよ」
私の座るソファの背に片手を付いて前屈みになるジャン。深い色のブラウンアイがゼロ距離で私を見つめている。
『ちょ、ちょっと……近いって』
「いいだろ…?せっかく二人きりなんだから」
ジャンが話すと若い男が放つ独特の香りが鼻をくすぐった。
どんどん迫ってくるジャンの唇。
必死で抵抗するが鍛え上げられた兵士の力に敵うはずもなく。
『ん……っ』
私は容易く唇を奪われてしまった。
しかし、こんな所でイチャつくのは非常にマズい。
誰かに見られでもしたら私だけじゃなくジャンまで処分対象になってしまう。
『だ、駄目だって……ジャン!嫌、今はやめて…っ』