第13章 ビビるジャン
私はライナーとベルトルトに連れられて通常兵舎にやって来た。
実験場や講義室と同じ木材で造られた簡素な建物。
いくつかある内の、最も古びた兵舎が新兵に割り当てられた物だ。
「俺達は訓練場に戻らなきゃならねぇ」
「小さな談話室があるから、其処で待っててよ」
背の高い二人に言われて私は談話室を目指す。
新兵兵舎の中はガランとしていて、人の気配は感じられない。
『(……訓練で出払ってるのか)』
そんな事を考えながら歩いていると、程なくして目的地に辿り着いた。
談話室…と云うよりも談話スペースと言った方がそれらしい。
壁や扉といった物はなく、兵舎一階の最奥に開けた空間が設けられている。
煤だらけのストーブを囲むようにして置かれた木製の椅子やソファ。
昨晩の名残なのだろうか。
楕円状の低いテーブルは食べ物のカスやカップで散らかりっぱなしだ。
兵長が見たら確実にキレるだろう。
神経質な上官の顔を思い起こしながらソファに座ってみると、中々にして良い座り心地だった。
新兵の訓練はいつ頃終わるのだろうか。
硬めの布に頭をもたげて目を閉じる。
実験の疲れもあってか、私の意識はすぐに遠退いていった。