第8章 師団長と疑い
しっかりと文字は読んだから、
奪い返されたことに慌てることはなかった。
「キャバクラ行ってたんだー……ふーん…アイリちゃんねぇ…」
ジトッとした目で
私の背中にくっついているナイルを振り返る。
「…可愛かった?」
さっきの目とは180度違う
満面の笑みを浮かべて聞いてみた。
「いや、まじでこの名刺は知らねぇ。」
「まぁ酔っ払ってて覚えてないのかもね?」
「いや、まじだって。」
私の笑顔を見て
さらにナイルの顔が青くなる。
「まぁとりあえず離れて?
その女の匂いが私に移るでしょ?」
身体ごとナイルの方を向き、
表情とは裏腹に、
結構な力でナイルを押して
身体を離す。
いや、本気で臭いんだよね。
飲み会帰りの臭いは
あまり好きじゃない。