第17章 掌の上
「え、この細胞も染色した方が
いいってことですよね?」
「そうそう。
一応顕微鏡でも見て、
分葉が確認出来るのが理想。」
「じゃあ、ウェスタンブロットと
WATassayとギムザ染色と…
んー結構細胞数入りますね……」
広くない机を挟んで、
眉間に皺を寄せながら
小難しい話をしている
2人に目線を向ける。
俺の知らない言語で話しているのではないかと
思うほどに、
会話を理解することは
できなかった。
そもそも、リオは頭がいい。
と、思う。
こいつが今大学でやっている
研究内容なんて、
俺には微塵もわからない。
そして、
そんなリオの後輩ともなれば、
当然こいつも頭がいいに決まっている。
特にこいつは、
人として頭がいい気がした。
リオは可愛い後輩だなんて
言っているけれど、
俺には悪い予感しかしなかった。
俺もこいつも
男だ。
どんなに
頭が良くても、
体育会系でも、
女が絡むとある程度単純になる。
だからなんとなくわかる。
リオとこいつ、
アルミンのお互いに対する意識は
異なっている。
リオが流されるなんて
思ってはいないが、
こいつは要注意人物だと、
俺の何かが警戒していた。
こうなったらもう、
力任せに帰ってもらうしか
思い付く方法がなかった。