第9章 あんま他のツンデレと仲良くしてんじゃねーぞ
カインは、男の横柄な態度に腹が立っていた。
「だから、ハンスに聞けば全て解るんだ」
「そう言って逃げるつもりじゃねーのか?」
男は、どうやらカインをからかって楽しんでいる様だった。
「お前、名前は?」
不意に男に名前を尋ねられ、カインは渋々自分の名前を告げた。
「カイン……ふん、ずいぶん可愛らしい名前だな」
男はまたカインを挑発する。
「……俺は名乗ったんだ!お前も名乗るのが礼儀だろ」
流石にここまで馬鹿にされているのを感じると、カインも声を荒げてしまう。
「そんなに興奮するな、そんなに知りてぇなら教えてやる」
男は漆黒の瞳を光らせて、グッとカインに近づいた。
目の前に男の大きなアーモンドアイに映る、少したじろぐ自分が見える。
もう少しで鼻先か触れそうな距離で、男は囁く。
「俺の名前はチェスター」
「カイン……お前いい匂いがするな」
そうクン…っと匂いを嗅いだチェスターは、いきなりカインの口唇をペロリと舐めた。