第10章 は?もう俺はお前だけのツンデレじゃねーから……。
「今日はとうとうお前の近衛隊デビューだぞ」
「あ、そうだった……すっかり忘れてた」
「おいおい、しっかりしてくれよ、新人兵隊さん」
ハンスが笑いながら、カインの頭を小突いた。
カインはそれだけで少し耳が朱に染まった。
「……なぁ、カイン」
不意にハンスが真顔に戻ると、真剣な声色でカインに話しかける。
「俺は近衛隊の隊長だ。全ての兵を束ねる責任があるんだ」
カインは黙って聞いている。
「お前が兵士になれば、お前一人に固執する事は許されない。沢山いる中の一兵士と兵士長の立場になるんだ」
「だから、今、まだお前が兵士ではない今、俺の気持ちをお前に知って欲しい。」
「カイン……俺はお前が好きだよ」
「少し頑固な所も、その少し照れた表情も……全部が愛おしい」
「……カインは俺の事、好きか」
カインは顔が上げられない。
「わ、わかんね」
「そうか」
恐らく、今ハンスはこれ以上無いほどに優しい顔をして見つめているに違いない。
それが何となく解るから、カインはますます顔が上げられなくなっていた。