第8章 ツンデレ好きなのか……そ、そうか……
ハンスの言った通り、城内は迷路のように広かった。
幾つもの似たような通路に、幾つもの似たような扉が並び、一体自分が何処を通って来たのか、さっぱり解らなくなった。
とにかく周りの全てに圧倒されてしまい、カインはすっかりお上り状態で、キョロキョロ見渡しながら歩いていた。
暫くすると、エントランスの様な所を抜けて、また外に出た。
外と言っても、アーチが掛かっていて、要は離れに抜ける廊下の様なものだ。
今は暗くて見えないが、ここはおそらく王宮の中庭へと続いているのだろう。
「なぁ、ハンス……寄宿舎ってのはまだ遠いのか?」
カインは遠くの灯りを見ながら、徐にハンスに聞いてみた。
………
しかし、返事が返ってこない。
「おい、聞いてん………」
カインが文句を言おうかと前を向いた瞬間、サーっ、と自身の血の気が引く音が聞こえた。
「う、嘘だ……ろ…」
目の前にある筈の大きな背中が無い。
あの逞しい大きな身体が忽然と消えてしまっていた。
「なんで……何処行ったんだよ!?」