第1章 【目に付いた話】
「あれ、おかしいな、ちょっと待てよ…あれどうなってんだ」
ブツブツ良いながら自分で自分を殴る様は、挙動不審を通り越して異常者にしか見えないだろう。
しかし、僕のプライドよりも優先すべきは変身の解除。
殴られても元に戻れなかった。
それならと、足元にあった大ぶりな石を掴んでこめかみを打つ。……戻れない。
背後にあるベンチの角に頭を打ちつける。……戻らない!
かくなる上は──
「ちょっとっ、もう止めなさいって!」
神薗清子が叫んだ。
それもそうだ。
隣に立つ街灯によじ登り、そこから顔面ダイブしようとする女子高生がいれば止めに入るのは、普通の人間ならば当然だろう。
「……頭、大丈夫?」
続けられた当たり前の言葉に、僕はシクシクと涙して見せた。