第1章 【目に付いた話】
「…スミマセン、僕をひっぱたいて貰えますか」
いきなりの変態チックな発言に、神薗清子がわずかに引いたのが分かる。あぁ、なんか遠い昔にもこんな事があったなと記憶が蘇ってきた。
──バシィッ!
聡い彼女はその行為が能力の解除に必要な事だと理解して、すぐさま僕の左頬に打撃を打ち込んだ。
予想していなかった右ストレート。
キドほどじゃないとは言え、良い腕をしている。っていうか殴るの早ぇーよ。
「いたた…せめてビンタで…」
「何も変わらないけど」
「そんなはず…」
僕の能力は、痛みでリセットされる。
つまり痛みは僕自身を強く認識させるセンスなのだ。通常なら痛みを感じた時点で本来の姿に──
「戻って…ない…?」
今度こそ本当に血の気が引いた。