第4章 【目が潤んだ話】
「…もう寝る、おやすみ」
照れ隠しか知れないが、神薗さんは僕に背を向けて横になってしまう。
時計の秒針が進む音がやけに響いて、僕はぽつりと呟いた。
「……くっついても良い?」
反応はない。だが、寝てはいないようなので、無言を許可と受け取ってすり寄る。
背後から腕を回し、抱き込むようにしてピッタリと体をくっつけた。
「………」
「………」
人の温もりを感じながら寝るのは、いつぶりだろうか。
母さんと同じ布団で寝た記憶なんて殆どない。本当は母さんの腕の中で眠りたかったと、満たされなかった幼少期の感情が蘇ってくる。
「……眠れないの?」
もぞもぞと身じろいでいる僕を、神薗さんは振り向いて覗き込んできた。
「…おいで、腕枕してあげる」
彼女から滲む母性に、僕は素直に甘えることにした。