第1章 【目に付いた話】
「…楯山さん…じゃないのよね?」
「え、えええ、えぇっと…」
言いよどむ僕に、少女は眼鏡の端をキリリと持ち上げて言った。
「黒いフードを被った男の子が、いきなり楯山さんの姿になって…」
終わった。
彼女の整然とした状況説明に、もはや逃れる術もない。
バッチリ能力を見られた事は、キドに正当な殺しの理由を与えてしまった。
まだ仲間の手に掛かって死ねるなら良いのかも知れない。この少女がマスコミか何処かに能力の情報を漏らせば、僕は超能力者として実験される事になるに違いないからだ。
ここらで一つ、「そんなの見間違いですよー、他人の空似ですよー」とでも言おうかと思ったが、真夏にマフラーをしている馬鹿はこの狭い国に何人いるか。
ダメだ、言い逃れ出来ない。詰んでいる。