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目が届く話【カゲロウプロジェクト】

第1章 【目に付いた話】


ギギギッ、と音がしそうに軋む首で振り向けば、そこには見慣れた制服姿で見覚えのある少女が自転車を押して立っていた。

今時珍しいお下げを緩く編んで、これまたガリ勉眼鏡を掛けた典型的な地味生徒。
ただ醸す雰囲気はそれとは違って、キャリアウーマン的な鋭さを身にまとっている。

確か名前は、神薗清子。
姉ちゃんと同じクラスの人間で、常に成績優秀な──


そこまで思い出して、はたと気付いた。
この神薗清子は、僕に何と声を掛けてきたか。

とっさに自身の体を見下ろせば、小さい手のひらにスカートから伸びた短い脚。視界に入った赤いマフラーに、僕は思わず悲鳴を上げた。

「ぎゃあぁあああっ!!?」

ヤバイヤバイヤバイヤバイ。
僕は無意識に姉ちゃんに化けていたらしい。更に不味いことに、変化した対象は既にこの世に存在していなくて…

つまり、無防備な状態で発動してしまった能力を、全く無関係な人間に見られてしまったのである。

事態の最悪さに、血の気が引いていく気がした。

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