第4章 【目が潤んだ話】
神薗さんの潤む瞳が、一瞬だけ鋭く光ったような気がした。
何も言わなくても、彼女はその聡明さで瞳の奥の心理まで読み取ってしまう部分がある。だから僕は、僕の罪を晒け出さなくて済むのだ。それがどれだけ有り難いことか。
「僕は…ずっと独りで姉ちゃんの苦しみを肩代わりしてると思ってたんだ」
でも、それは違った。
姉ちゃんの異変にちゃんと気付いて、姉ちゃんの死を悔いてくれている人がいた。僕だけが苦しんでいるのではなかった。
助けられなくて後悔する気持ちを共有出来て、慰め合える。
それだけで、僕は救われるのだ。──もう、死んでも良いとさえ、思えるほどに。
「…キミは、独りで頑張って来たんだね」
思わず漏らした嗚咽に気付いて、神薗さんが僕の背中を優しく撫でた。