第4章 【目が潤んだ話】

彼女の笑顔が、大好きだった──そう言って、神薗清子は目尻を濡らした。

「キミと会って、また楯山さんの笑顔が見れて、偽物の笑顔だとしても私にはすごく嬉しかったの。贖罪された気になって…」

目の前の神薗さんは、酷くか弱い存在のように小さく見えた。
僕は、いつも彼女がしてくれるようによしよしとその頭を撫でてやる。

すると、神薗さんの吐露は勢いを増して、涙が手の平から零れ落ちた。

「キミに優しくするのも罪滅ぼしの一種よ。私は利己主義で…偽善者だから…」
「そんな事ないよ」

これ以上彼女が自分の言葉に傷つかないよう、言い終わる前に僕は彼女を抱きしめた。

顔を上げた彼女の瞳に、にっこりと微笑んだ。

「何も出来なかったのは僕も同じだから」