第4章 【目が潤んだ話】
それと同時に、何も聞いてこない神薗さんを不思議に思う。
深く追求されないのは有り難いが、普通は気になって聞くものじゃないだろうか。
能力の事とか、家族の事とか、家出をしてきた理由とか。
そういった身の上話を一切聞かず、当たり前のように受け入れてくれる神薗さんの存在が──僕の救いになっていることは確かだ。
でも、聞いて欲しい部分もあって。
僕も彼女についてもっと知りたかったから、もっともっと話し合いたかった。
「──神薗さんは、どうして僕に優しくしてくれるの?」
勇気を出して、聞いてみた。
風呂上がりで髪を乾かしていた神薗さんは、僕の問いにしばらく考え込んだ後、ゆっくりと答えてくれた。
「……楯山さんの姿だったからかなぁ」
「へっ?」
回答の意図が掴めず、僕は間抜けな声を漏らす。