第3章 【目に星が飛んだ話】
「本物の犬なら世話しやすいのに」
「お望みとあらば、いつでもなってあげるよ」
「そしたらドッグフードを食わせてやるんだから!」
神薗さんとの馬鹿げた掛け合いが、楽しくてしょうがない。
キドはこの人を姉ちゃんの代替品のように言ったけど、それは違う。僕はこの人の前では、ありのままの自分をさらけ出せる。
駆け引きなしで笑える自分がまだ残っていたのかと、僕は僕自身に驚いた。
「ねぇ、神薗さん?」
「何?」
「──今夜泊めてくれる?」
僕の幼い精神が、愛情に餓えて神薗さんにすがりつく。神薗さんはそのクールな表情を一瞬だけ崩して、
「…家族には連絡入れておきなさいよ」
─と言って、優しく微笑んだのだった。
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